ハンドル(取手・引手)の種類:完全ガイド
製品設計においては、ハンドル(取手・引手)の選定がカギとなる用途が多くあります。用途に適したハンドルを選ぶには、材質や幅(ピッチ)など、広範な要件の検討が必要です。同時に ハンドルの種類は多岐にわ ため、複雑な製品開発プロセスの初期段階からハンドルの選定を組み込むことで、設計作業の煩雑化を防ぐことができます。
用途に最適なハンドルを選ぶには、ハンドルの基本的な機能を知っておくことが役立ちます。このガイドでは、ハンドルの基本情報と、より用途に適したハンドルを選ぶためのポイントを解説します。
ハンドルとは?
ハンドル(取手・引手) は、ドアやパネルなどに設置する金物です。ドアやパネルを開けたり対象物を運びやすくしたりする機能を持ち、開閉や持ち上げ動作に快適さと人間工学的な掴みやすさを付加します。
ハンドルの種類
グラブハンドル
グラブハンドル は、快適さと掴みやすさを重視したハンドルで、エンクロージャ、ドアや引き出しの開閉をシンプルに行え、取付も簡単です。代表的なグラブハンドルには表面取付タイプと折りたたみ式の2種類があり、サウスコでは各色のグラブハンドルを取り揃えています。
表面取付ハンドル
対象物の外側表面に取り付ける表面取付ハンドルは、ドア、引き出しの開閉や、パネルの取り外しに適した掴みやすいハンドルです。多くのモデルは裏止めで、ねじなどの取付金物がエンクロージャの外側から見えないため外観をすっきりと保つことができます。
折りたたみハンドル
折りたたみハンドル は裏止めのハンドルを倒して折り畳めるため、取付表面の金物の突出を抑えることができます。使用時にのみハンドルを起こすタイプで、箱や引き出しを取り出して運ぶ用途にも便利に使うことができます。また、折りたたみハンドルは、摩擦によってガタつきを防ぐ設計を備えています。
サウスコの P9 90度折りたたみハンドルは、設置場所が手狭なエンクロージャなどの用途でスペースを有効活用し、アクセスの利便性を向上します。ドア、引き出しや収納などの開閉に加え、ハンドルを使わない時はコンパクトに折りたたむことができます。
平面(フラッシュ)取付取手
ドア、引き出しやパネルの表面に金物の突出が少ない埋込型の取手です。掴みやすさに優れています。
平面(フラッシュ)取付取手
サウスコでは、用途に合わせて選べる平面取手を各種取り揃えています。埋込型のため金物の突出が少なく、取付表面の外観をスムーズに保ち、特に手狭な場所や向かい合わせに設置するドア、引き出しやパネル用途で取手の引っ掛かりを防ぎます。
耐久性に優れ、スタイリッシュなデザインの P1 ポケット取手 は、重いドアや引き出し用途に適した掴みやすい取手です。2つの部品でドアパネルを前後から挟んで取り付ける構造で、4本の指が入る十分な幅と第二関節まで入る奥行を確保しています。金物の突出が少なく、取付表面をスムーズに保ちます。
ドアやパネル表面の金物の突出を最小限に抑えた埋込型のP2 ポケット取手 は、パネルの持ち上げや取り外し作業にも十分に掴める奥行きを確保しました。パネルの加工は単穴のみ、工具を用いずに表面からはめ込むだけですばやく取り付けられ、内蔵タブがパネルの裏側でしっかりと固定します。
内蔵式引手
内蔵式引手 は、外観のデザイン性が求められる用途に適したハンドルです。ハンドルを内蔵するため、パネル表面に金物が突出せず、外観をすっきりと保ちます。使用時のみハンドルを引き出すタイプです。
用途に適したハンドルを選ぶには?
ハンドルを選ぶ際には、用途要件に合わせて、以下のポイントを考慮します。
用途
まず、ハンドルの役割を明確にします。実用性を重視する設計の立場からは、比較的低コストで取り付けやすい表面取付のグラブハンドルが選ばれることが多くありますが、これに対してエンドユーザーからは、設置スペースや外観性の理由で表面への突出が少ない平面取付のハンドルが好まれる場合もあります。
あわせて、ハンドルの引張または持上最大荷重が用途に適しているか確認します。ハンドルの耐荷力は、種類や取付方法によって大きく異なります。サウスコ製ハンドルの最大静的荷重は600 Nから1500 Nまで各種あり、ドアや引き出しなどの一般的な用途を超える負荷に対応しています。
外観性
ハンドルには、パネルなどの対象物を操作する機能に加え、製品の外観を引き立てる役割もあります。
表面取付ハンドルは、使いやすく頑丈な印象を与えます。一方、平面取付ハンドルはパネル表面にフラットに取り付けられるため、一体感を持たせることができます。また、長方形の平面取付ハンドルはカスタム品のような見栄えと、シンプルな機能性を両立します。
ハンドルの色も同様に、製品の外観に影響します。アルミニウムやステンレス鋼ハンドルは現代的で堅牢な印象を与え、プラスチック製のハンドルは多くが黒色で、製品デザインに馴染みやすい基本色または差し色です。
材質
代表的なハンドルの材質は、プラスチック、アルミニウム、亜鉛とステンレス鋼です。重量の点からプラスチックとアルミニウム製が用いられることが多く、例として航空宇宙用途では軽量化が非常に重視されています。
材質の選定においては、ハンドルの重量に加えて使用環境を考慮します。プラスチックなどの一部の材質は製造業や工業用途で求められる長期耐久性に欠ける場合があり、ステンレス鋼は高温や湿気のある、より厳しい環境に適しています。
人間工学的な使いやすさ
ハンドルの幅(ピッチ)と奥行き(または高さ)は、使い勝手を大きく左右します。ハンドルにはサイズ規格が無く、仕様はさまざまです。選定の際にはユーザーが快適に使える大きさを考慮します。幅が狭すぎると、手をすぼめてハンドルを掴む必要が生じ、快適性を損います。
人間工学的に最適な掴みやすさと操作の快適性を確保するには、標準的な指4本分の幅のハンドルが理想的です。用途によっては取付スペースやコストの理由から幅の狭いハンドルを採用されることがありますが、一般的には快適に操作できるものをおすすめします。
また、ハンドル幅のカスタマイズが必要な用途の場合は、サウスコのP8シリーズが幅30〜200mmのカスタム品に対応しています。
ハンドルの奥行きまたは高さは、表面取付ハンドルの場合は特別な配慮が不要なケースがほとんどです。特殊な例として、手袋を装着してハンドルを使うことがありますが、このような場合は十分な奥行きまたは高さを確保します。他方、平面(フラッシュ)取手の奥行きは、用途に合った配慮が必要です。実際、このタイプの取手の奥行きは、多くが指先が入る程度のためグリップが浅く、開ける際に力を込められないため、荷重と操作力のバランスを検討する必要があります。高荷重で、指全体を使ってしっかりと掴める取手が必要な用途向けに、サウスコでは十分な奥行きを確保した P2 ポケット取手 や、使用時に引き出す内蔵ハンドルに指4本分の幅を確保した 67 内蔵式引手 をご用意しています。
取付方法
ハンドルの取付方法は、用途やハンドルの種類によって異なります。グラブハンドル の多くは表面取付でねじ穴のみで取り付けられますが、平面(フラッシュ)取手の多くは埋込式でパネルの加工が必要です。
ライフサイクルと耐久寿命
ハンドルの耐久寿命については、ほとんどの用途で検討の必要はありません。標準的な使い方であれば、繰り返し使用でも故障の可能性が低いためです。しかしながら、用途によっては製品イメージなどの理由で、外観を損なうキズ付きについて配慮が必要な場合があります。このような場合は、キズ付きを目立たなくする特殊表面仕上げをおすすめします。
さいごに、ハンドルの選定にあたっては、標準品に加えてカスタム品という選択肢もあります。サウスコの経験豊富な技術チームは、ご希望の用途要件を満たすハンドルの設計開発をお手伝いいたします。 用途に適したハンドルの種類や選定のご相談など、サウスコまでお気軽にご相談ください。