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ヒンジの種類、使いどころと選び方

ヒンジの種類、使いどころと選び方

多くの製品や用途の設計プロセスにおいて、適切なヒンジを選ぶことは大切なステップの一つです。ヒンジは通常、一方のドア、フタやパネルをもう一方のパネルやフレームとつなぐ役割を担います。単純な装置と思われがちですが、数ある種類の中から用途に適したヒンジを選ぶ際には検討すべき事項が多くあります。

実際の設計プロセスでは最終段階までヒンジが見過ごされ、後から急いで用途目的に最適なヒンジ探しが始まるケースも少なくありません。場合によっては、選んだヒンジの性能が想定通りで無い、もしくは試験をクリアできないなどの理由で設計プロジェクトに遅延が発生することもあります。このような事態や再設計による追加費用の発生を防ぐためにも、設計プロセス初期からヒンジの検討を進めることが大切です。

ヒンジの選定においては、数ある種類の中から用途に最適なものを選ぶためのポイントがあります。ここでは、それぞれの種類のヒンジの特徴や機能と、使いどころを解説します。

ヒンジの種類                        

ヒンジを決める大きな要素は、エンドユーザーが機器のドアやパネルにアクセスし使用する上で必要なレベルの操作性や機能性ですが、それを実現する方法は一つとは限りません。用途に適したヒンジを選ぶ際には、以下の代表的なヒンジを比較し検討していくことをお勧めします。

トルクフリーヒンジ

トルクフリー(トルク無し)ヒンジは最もシンプルな構造で、ヒンジを構成する2枚の羽のうち、通常回転軸となるピンまたはシャフトを一体化した羽は筐体に固定され、もう1枚の羽が自由に回転します。このような機構のため、エンクロージャのドアを自由に開閉し、簡単に内部にアクセスできます。  

トルクフリーヒンジは、ドアもしくはエンクロージャの閉鎖状態を保つ機能を持ちません。代表的な身近な用途にはキッチンキャビネットがあります。シンプルに操作でき低価格なことと、住宅環境に適していることが理由です。トルクフリーヒンジの材質は、ステンレス鋼やアルミニウムなど多岐に渡ります。

最もシンプルなトルクフリーヒンジは、両方の羽をドアやパネルの外側に取り付けるため、ドアパネルの開閉時に筐体フレームと合わない事態が起きにくく、また外側に取り付けることでエンクロージャ内のスペースを占有しないという利点があります。 

コンシールドヒンジ

外観性が求められる用途に適しているのは、外側から見えないコンシールドヒンジです。キャビネットドアの見た目を美しくしたい場合に多く用いられ、すべての金物がエンクロージャの内側に取り付けられるため、ドアやパネルに一体感のあるすっきりした外観を可能にします。

コンシールドヒンジはまた、セキュリティや防犯性も強化します。ヒンジが外側から見え無いため、不正なアクセスを招く潜在的なリスクを低減し、エンクロージャ内に保管された物品を盗難などの被害から守ることができます。

このような利点を持つコンシールドヒンジですが、エンクロージャの内側に取り付けるため、ある程度内部のスペースを占有してしまう問題があり、スペースの確保が求められる用途では難しい選択になる場合もあります。一例には、多くの機械要素や装置を含む電子機器のエンクロージャがあります。用途のエンクロージャに特にスペースの問題が無く、ヒンジを隠したい場合にはコンシールドヒンジは非常に有用な選択肢です。

取外可能なヒンジ

取外可能ヒンジもまた、よく使われるヒンジです。トルクフリーヒンジの多くは羽を取りはずせるため、ドアやフタ自体を取り外すことができます。抜差ヒンジには、ばねを内蔵しピンを取り外しやすくしたタイプもあります。いずれも、羽はドアに取り付けたままドアを取り外すことができます。

なかでも最も簡単にドアを取り外せるのが抜差ヒンジで、ドアを持ち上げる1つの動作のみでドアとヒンジピンを取り外すことができます。抜差ヒンジは多くの用途に適しており、例えば狭い場所に設置されたエンクロージャのドア取り外すことで全開したい用途には最適です。また、ユーザーによる組立が必要なエンクロージャでは、組立てやすいというメリットがあります。

戻り止めヒンジ

戻り止めヒンジはドア、パネルやフタを所定の位置で保持する、ドアやフレームに永久的に取り付けるタイプのヒンジです。ステーなどの補助部品を用いずに予め設定した角度でドアやフタを開いたまま保持します。開放角度はヒンジ製造時に設定され、ヒンジは設定済で納品されるため、発注の際には角度をご指定ください。

ヒンジ内部に組み込まれた戻り止めは、金属またはエラストマー(ゴム)製のばねでヒンジ内に力をかけることで機能します。ユーザーがドアやフタを手で支える必要が無く、両手を自由に使える利点を持つ戻り止めヒンジは、用途に合わせてトルクおよび開放角度を選ぶことができます。

トルクヒンジ

摩擦ヒンジとも呼ばれるトルクヒンジは、開いたドアやフタを好みの位置(角度)で保持できます。この点で、予め設定した角度のみで保持する戻り止めヒンジとは異なります。トルクヒンジはまた、操作力もカスタマイズできるため、ユーザーがドアを開け閉めする際の抵抗と感覚を最適化できます。

回転の動きに対し抵抗するため、トルクヒンジは安全性や外観性の目的でドアパネルを任意の開放位置で保持したい用途に適しています。トルクヒンジは内蔵したばね機構がヒンジのシャフトに摩擦を加えることで、それぞれの回転方向に対して摩擦を正確に制御します。

トルクヒンジがエンドユーザーの使い勝手をさらに向上できる特徴には、フタの用途で開ける方向の摩擦を減らすクラッチ機構があり、これによって少ない力で楽にフタを持ち上げられ、同時に不必要な下方向の力(重力)に対する摩擦を維持します。このような働きによって簡単にフタを開け、補助部品を用いずにその位置を保持することができます。例えばラップトップコンピュータのスクリーンをユーザーが好みの角度に調節し保持できるのは、トルクヒンジの機能によるものです。

カウンターバランス ヒンジ

パネルやフタの寸法や重量が大きい場合は、安全にパネルやフタを開けられる方法が必要になります。ガスステーなどの補助部品を使うのも一つの方法ですが、用途によっては補助部品の取付スペースが大きすぎる、もしくはパネルの重量を支えきれないことがあります。このような用途には、ばねの力を利用し、フタを少ない力で楽に開けられるカウンターバランスヒンジが適しています。

カウンターバランスヒンジには、スペース要件やヒンジの設計によって圧縮またはトーションばねが用いられ、これらのばねの力によってフタを少ない力で持ち上げられ、50kgを超えるフタでも楽に、そして安全に開閉できます。

その他 設計の際に考慮すべきこと

用途に適したヒンジを選ぶ際に考慮すべきその他のポイントがいくつかあります。まずは材質です。ステンレス鋼やプラスチックなどがありますが、用途の使用環境と材質によってヒンジの性能とコストが変わってきます。材質は、ドアやフタを開けるための安全性と、ヒンジを使用する環境に合い、強度要件を満たすものを選びます。ヒンジの寸法についても同様です。

用途によっては、標準品ではエンドユーザーのニーズを満たせない場合があり、その際にはカスタム品を開発し、用途のニーズとエンドユーザーの使い勝手を最適化します。ヒンジの検討を設計プロセスの初期から始めることで、よりユーザーの満足度を高める機能を組み込むことができます。

設計や用途に適したヒンジの選定やカスタム品の開発には、信頼できる部品メーカーと協働するのも一つの方法です。さまざまな種類のヒンジや選び方について、詳しくはサウスコまでお問い合わせください。技術チームが用途に最適なヒンジ探しや、高いユーザー満足度を可能にする製品設計のお手伝いをいたします。是非お気軽にご相談ください。

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