小さなアップグレードで大きなインパクト:鉄道車両改修で乗客の体験を向上するには
鉄道車両の中期改修はメンテナンス、修理、運行(MRO)のそれぞれの部分において、性能強化、業界基準への適合や乗客の体験向上といった、運用面と乗車体験の両方を向上できる非常に強力な機会でもあります。
筆者:スチュワート・ベック(サウスコ、グローバルプロダクトマネージャー)
鉄道事業者が既存車両の寿命を延長すべく設備投資を行うにあたって期待することは、その改修プログラムによって旅客体験や運用効率が実際に目に見える形で改善されることです。加えて、今日の旅行者が求める利便性、快適さ、安全性を備えたプレミアムな鉄道体験を実現するという乗客からの高い期待にも応える必要があります。改修とは、多くの鉄道事業者にとっては車両の全面的なオーバーホールを意味します。他方、小規模でターゲットを絞った内装・外装のアップグレードによって、ダウンタイムやコスト、メンテナンス負担を大幅に増やすことなく、改修後の車両に格段の違いをもたらすことも不可能ではありません。
「プレミアム」な旅行体験
客車の座席は、乗客の旅行体験の向上に最も影響力のある部分の一つです。改修時に、トレー、座席テーブル、アームやヘッドレスト、ディスプレイマウント、さらにはコートフックの機能と使い勝手を改善することで、ユーザーの利便性と快適さを向上します。


サウスコ AH - 二つ折り コンスタント(定)トルクヒンジ:テーブル天板を任意の角度でしっかりと保持
例えば、折りたたみ式のトレーテーブルや座席テーブル。多くの列車ではボックスシートなどの対面座席の中央部に固定式のテーブルが設けられています。座席もテーブルも据え付けのため、テーブル天板の位置を調整する唯一の方法は180°折りたたむことです。乗客は着席後テーブル使用時には天板を起こし、立ち上がる際には場所を空けるために折りたたみます。しかしながら、時にこのような折りたたみテーブルの中には乗客が頼りなさを感じ、また万が一、経年により天板が安定して固定できず乗客の膝の上に落ちる場合は、満足感だけでなく安全性を欠く問題になります。
このような事態は、非常にシンプルなアップグレードで防ぐことができます。例えば、摩擦技術を搭載したサウスコのAH二つ折りコンスタント(定)トルクヒンジは、天板を任意の角度で保持できるため、天板が落ちることを防ぎます。この堅牢な材料を用いた構造のトルクヒンジは、信頼性の高い性能とより高い安全性を可能にします。動きを制御することで指挟みを防止し、またフラッシュ(平面)設計で、関節部の挟み込みを起こしません。このシンプルなヒンジのアップグレードは、テーブルユニットと、座席背面トレーテーブルの両方に適しており、テーブル部の頑丈さによる安心感とプレミアムな使い心地だけでなく、耐久性と長寿命化を可能にします。
旅行体験を向上させる効果的なもう一つの方法に、客車の座席にディスプレイマウントを追加することがあります。今日、ほとんどの鉄道利用者はモバイル機器を携帯しています。移動中の機器使用を簡単かつ便利にすることは、いかなる鉄道車両改修プロジェクトにおいても最優先にすべき事項とも言うことができるでしょう。
例として、モバイル機器を安全に取り付けられるホルダー機能を提供することで、旅をより快適に、楽しいものにできます。サウスコはまさにこの目的のために、モバイル機器をクリップにカチッと簡単に固定できるディスプレイマウントソリューションを設計開発しました。このクリッピング機構は、携帯端末からタブレットまで、さまざまなサイズのモバイル機器に適応できるよう設計されています。このソリューションは、サウスコが提供するすべてのモニターマウントと同様に、信頼性の高い保持能力と柔軟な位置決めオプションを備えており、エンドユーザーのニーズを叶え、より良い視聴体験の提供ができるようになります。
メンテナンスプロセスの効率化
設備の変更は、乗客の移動の快適さを向上する大きな機会であるとともに、メンテナンス作業を簡素化し、迅速化できる大きな可能性を秘めています。
例えば、シートカバーの交換は定期的に行う必要があります。一見単純な作業のようですが、もしカバー交換作業を行うにはまず床にボルトで固定されたシート全体の取り外しが必要であれば、作業には時間とコストがかかることになり、メンテナンス担当者に加えて鉄道技術者による作業も
必要なため、資源、時間とコストの負担が発生します。その負担を軽減できる方法は、改修時に座席シートの設置方法を変えることです。クイックリリース式のプッシュ-クローズラッチ機構を導入し、座席の取り外しや再取り付けを簡単に行えるようにすることで、鉄道技術者による作業を省き、メンテナンス担当者のみで全工程の作業を行えるようになります。
回転機構によるセキュリティ、クイックリリース機能とプッシュ-クローズの利便性を兼ね備えた堅牢なサウスコのR4回転ラッチシステムは、このような用途に理想的で最適なソリューションです。小型設計で、内部取付で外側から見えないこのラッチは、閉じる際のズレを許容し、少ない力で簡単に噛み合い、しっかりとフィットし固定します。また、このラッチシステムは隠しピンホールから開けることができるため、ラッチ機構の誤開放や、こじ開けなどの不正行為を防止します。
安全要件に適合
車両をより長く使う、すなわち耐用年数を長期化する上で鉄道事業者が抱える課題は、最新規制や安全基準に適合するように車両の構造や関連機器・設備を更新する必要があることです。改修時に基準に従い設備を最新化できる能力を持つ鉄道車両メーカーや鉄道事業者は競争で優位に立つことができるでしょう。


サウスコE3 VISE ACTION®(バイスアクション)コンプレッションラッチ: 一目でラッチの開閉状態を確認できるMake Safety Visible by Southco™(サウスコの「安全の見える化」)シリーズ製品、外装パネルの確実な固定を視認できる
サウスコのE3 VISE ACTION®(バイスアクション)コンプレッションラッチは、パネルを閉じるという機能において、その高い信頼性と優れた耐振動性から鉄道分野の主流として多くに導入されている製品ですが、業界基準の変化やセキュリティ要件の厳格化に伴い、長年にわたり大きく進化してきました。
亜鉛鋼、アルミニウム、ステンレス鋼といった幅広い材料で展開するサウスコのコンプレッションラッチは、いずれも鉄道車両の防火性能を規定する欧州鉄道防火規格EN 45545に基づく広範な試験済です。サウスコのE3 VISE ACTION®コンプレッションラッチは卓越した耐火性能を示し、アルミニウムバージョンは同規格の高リスクの車内エリアの耐火要件であるE30に適合します。ステンレス鋼バージョンはE60に適合し、これは火災時に車内エンクロージャードアなどの防火壁の構造的な強度を少なくとも60分間維持できることを意味します。
改修時のアップグレードにこれらのラッチが最適な理由は、多くの場合に現場でラッチを簡単に交換できるためです。
サウスコのE3 VISE ACTION®コンプレッションラッチが遂げたもう一つの進化は、パネルの安全な閉鎖に対する懸念の高まりへの対応です。過去10年間で列車の高速化が進んだことにより、外装パネルの不完全な閉鎖が重大な危険を引き起こす可能性が深刻化したとの懸念が呈されています。この課題に応え、サウスコはパネルの適切な閉鎖を目視で確認できるビジュアルインジケーター(表示器)付きバージョンのコンプレッションラッチを数種提供しています。反射材付きのウイングを搭載したラッチは、ラッチ開放時に飛び出して開放状態を表示し、ウイングはラッチ閉鎖時のみ格納します。もう一つのタイプである双安定カバー付きは、ラッチが開放時にカバーが全開し、ラッチがしっかりと閉じられるまで「ラッチ開」状態を視認できます。サウスコの耐火ラッチシリーズと同様に、サウスコがMake Safety Visible by Southco™(サウスコの「安全の見える化」)シリーズとして展開するこれらのコンプレッションラッチは、既存ラッチのドロップインとしてそのまま置き換えられるため、改修においても、シンプルながら非常に効果的なアップグレードを行うことができます。
未来に備える
改修は、適応的かつモジュール式の製品ソリューションを導入できる大きな機会であり、それにより、乗客の快適さの向上、メンテナンス手順の効率化、そして運行の安全とセキュリティの強化を通じて鉄道での体験をより良くすることができます。


サウスコでは、鉄道乗車体験の向上に寄与する、適応性に優れドロップインとして置き換え可能な製品を幅広くラインアップ
鉄道用途においては、部品レベルの小規模のものであっても、ターゲットを絞った変更を行うことで、より競争力の高い鉄道サービスの提供、そして新たな要望や期待に応えることができるようになります。