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トルクヒンジとは?

トルクヒンジとは?

ドア、フタ、その他種類のパネルの動きを摩擦によって制御するトルクヒンジは、補助部品や追加部品を一切使わずに可動範囲内のあらゆる位置でパネルを保持することができます。

トルクヒンジは、パネルを動かした時にあらかじめ設定した抵抗を生じる機構により、あらゆる角度でその位置を保持できます。トルクヒンジには2つのタイプがあります。一つは製造時にトルクを設定済みの状態でお届けし、そのトルクを製品寿命にわたり維持するコンスタント(定)トルクヒンジ、もうひとつはエンドユーザーがヒンジの張力をねじや他の機構を用いて調整できる調整可能トルクヒンジです。

トルクヒンジは主に、ノートパソコンのモニタ、産業機械や医療機器のドアなど、パネルを特定の開閉位置で保持する必要がある用途に用いられます。また、パネルが急にパタンと閉じる動きを防ぐことから、安全性を確保する目的にも適しています。

トルクヒンジとは?トルクヒンジとは?

トルクヒンジを使うべき理由とは?

トルクヒンジには、トルクフリー(トルクのない)ヒンジには無いメリットが多くあります。用途によりますが、主なメリットは以下の通りです。

  • 人間工学的な使いやすさ
    両手での作業が必要な用途で作業をしやすくします。トルクヒンジは、パネルを開けた位置で保持するため、ドアやパネルを手で押さえる必要がありません。
  • 安全性:
    ルクヒンジは、パネルが急にパタンと閉じないようにできる手軽な手段です。パネルが急に閉じることにより、作業者のケガや機器の損傷が起きる可能性がある用途で、このようなリスクを防ぎます。
  • 省スペース:
    ルクヒンジは追加または補助部品が不要なため、取付スペースが狭小な用途に適しています。有効なスペースを大きく取ることができ、製品自体の重量を低減します。
  • 外観:
    コンシールド(隠し)タイプのトルクヒンジは、最終製品の見た目を向上します。外側からヒンジが見えず、かつパネルを開いた位置で保持することができます。
  • 耐久性:
    トルクヒンジは繰り返し使用に強く、重荷重にも対応するため、耐久性が重視される用途に適しています。

トルクヒンジは、どのような用途でもパネルの動きを精密に制御でき、安全性の強化、有効スペースの拡大、外観の向上と、長期にわたり性能を維持するメリットをお届けします。  

トルクヒンジの種類

サウスコでは、さまざまなタイプのトルクヒンジをご用意しており、それぞれ独自の設計と機能があります。主なタイプ:

コンスタント(定)トルクヒンジコンスタント(定)トルクヒンジ

コンスタント(定)トルクヒンジ

コンスタント(定)トルクヒンジ は、可動範囲全域にわたる一定の抵抗によって、スムーズな動きかつ動作を制御します。医療機器や実験装置などの、精密な位置決めが求められる用途で多く用いられます。 

調整可能ヒンジ 調整可能ヒンジ

調整可能ヒンジ 

調整可能ヒンジ は、ユーザーが動きに対する抵抗の度合いを調整できるタイプです。調節には通常ツール(工具)を使用します。このタイプのヒンジは、使用期間中にパネルの重量が変わる可能性があり、変化に合わせてトルクの調整が必要な用途で多く用いられます。

単方向トルクヒンジ単方向トルクヒンジ

単方向トルクヒンジ

単方向トルクヒンジ は、一方向の動きに対してだけ抵抗があり、もう一方にはないヒンジです。このタイプのヒンジは、ドアやフタなど、パネルを楽に開けられ、かつ特定の角度でパネルの保持が必要な用途で多く用いられます。  

ディテント(戻りどめ)ヒンジディテント(戻りどめ)ヒンジ

ディテント(戻りどめ)ヒンジ

ディテント(戻りどめ)ヒンジ は、複数の特定の角度で動きに対して抵抗を持ち、その特定の角度でドアやフタを保持します。このタイプのヒンジは、キャビネットや家具で多く用いられ、使用時にはドアやフタを開けた状態を保持し、終了時にはそっと閉じる動きをします。 

トルクヒンジを選ぶ際には、用途特有の要件にあわせて、適切な抵抗の程度と可動範囲を選ぶことが大切です。また、ヒンジの材質についても、用途の使用環境に適した高品質の材質を選ぶことをおすすめします。

用途に適したトルクヒンジを選ぶポイント

最適なトルクヒンジを選ぶには、個別の用途、荷重、位置制御の程度などの要件を考慮します。主なポイントは以下の通りです。

  1. パネルの重量:
    トルクヒンジの耐荷重は、ヒンジを取り付けるパネルの重量に適していますか? 正しい耐荷重は、十分なトルクを確保しヒンジが効果的に機能するための重要な要素です。パネルの重量がトルクヒンジの耐荷重を超過していないことをご確認ください。
  2. 可動範囲:
    パネルを動かしたい範囲を定め、その範囲全体にわたり必要なトルク機能を備えたトルクヒンジを選びます。トルクヒンジは、用途においてパネルを楽に開閉することができ、必要時に開いた位置を保持できるものであることをご確認ください。
  3. トルク:
    ユーザーがトルクを調整できるタイプのトルクヒンジは、現物にあわせてトルクを最適化できる利点があります。パネル表面または裏側に物を貼り付けた場合でも、パネルの軽微な重量変更に合わせてトルクヒンジを調整し、最適な性能を維持できます。
  4. 周辺環境:
    トルクヒンジは使用環境に適していますか? 最終製品が、極高低温、湿気、塩霧などの過酷環境で使用される場合は、それらに適したトルクヒンジを選びます。ステンレス鋼製のヒンジは耐腐食性を持ち、また密封構造のヒンジは外部環境からヒンジ内部のトルク機構を保護します。
  5. 取付方法:
    ヒンジ取付要件と、用途製品に簡単に取り付けられる方法を検討します。コンシールド(隠し)、表面、彫込型、バレルダウン(管が内側に突起)、いずれのタイプにおいても、用途を精査し、最良の性能を発揮できるヒンジを選ぶことが重要です。

サウスコでは、トルクのあらゆるニーズにお応えする幅広い種類のトルクを取り揃えています。上記のポイントを考慮し、用途要件に最適なトルクヒンジ選びにぜひご活用ください。

トルクヒンジを使うべき用途とは? 

トルクヒンジは、一般的にドアやパネルの動きの制御や位置決めが求められる用途で用いられます。主な用途:

  • ノートパソコン:
    モニターの位置を保持し、必要時にはスムーズに動き、かつ動きを制御
  • 医療機器:
    診察台や撮影装置をはじめ、多岐にわたる医療機器の正確な動きと位置決め
  • 航空宇宙
    コックピットのドアやキャビネットなど、飛行中にパネルやドアの位置を保持します。加えてトルクヒンジは、快適な機内体験を可能にする座席のヘッドレストやアームレストの位置調整にも用いられています。
  • 自動車
    センターコンソール、ヘッドレスト、インフォテイメントシステムには、使いやすさと乗車体験を向上するさまざまな種類のトルクヒンジが用いられています。
  • 産業機械:
    主にエンクロージャーや産業機械用途で、アクセスをしやすくし、またパネルやドアの動きを制御することで現場環境の安全とセキュリティ確保に貢献します。

トルクヒンジは、ドアやパネルの動きの制御が求められ、かつ精密さ、耐久性と信頼性が重視される幅広い用途で用いられています。

ヒンジのトルク量とは?

トルクヒンジには、さまざまなトルク値の選択肢があります。トルク値は特定の角度で回転させるのに必要な力の量で、単位はニュートンメートル(N・m)またはインチポンド(in-lbs)が用いられます。トルクヒンジのトルク値の設定は、メーカーやモデルによって異なります。

サウスコではトルク値0.1 N・mから約20 N・mまでのトルクヒンジを取り揃えています。その他、重量が重い、もしくは動かしづらいパネル用途向けには、パネルを持ち上げる力を相殺するカウンターバランスヒンジをご用意しています。

特定の用途に適したトルク範囲は、ドアやフタのサイズと重量、ご希望の開口角度、必要な動きに対する抵抗の程度など、さまざまな要因によって異なります。

用途に適したトルク値を算出するには?

トルク値は、以下の3つの要素から決定します:

  1. ドアの質量(重量)
  2. ドアの寸法(ヒンジから重心までの距離とユーザーが加える力)
  3. 動きに対する感覚的な好みと抵抗

上に挙げた3番目は主観的な要素も含んでいるため、必要なトルク値の計算式(通常は[ 力 x 距離 ])で得られる値には限りがある場合もあります。また、用途によっては外力(タッチスクリーンを指で押す力など)を考慮し、安全に関する要素または抵抗を追加することをおすすめします。

これらを踏まえた上で、まずお試しいただきたい通常の算出法は、ヒンジに作用する力にヒンジまでの距離を掛けて、その値に「感覚」分として約30%を追加する方法です。 ご不明の点やご質問は、サウスコまでお気軽にお問い合わせください。当社の経験豊富なエンジニアが、お客様の用途に適したソリューションの選択をサポートいたします。

トルクヒンジ - おわりに

トルクヒンジは、可動範囲にわたりスムーズで一貫した動きを可能にし、ドアやパネルを開いたままにすることで、ユーザーが両手を使って作業できるようにします。この点で、トルクヒンジはドアやパネルの動きや位置を制御するための理想的な方法です。

正確に繰り返し位置決めができるため、医療機器、自動車、産業機械、航空宇宙部品など、幅広い用途での使用に適しています。多種多様なドアやパネルのサイズ、重量や外観要件に合う、幅広いサイズと材質を取り揃えています。

トルクヒンジは、どのような用途であっても、パネルの動きを正確に制御し、ユーザーが両手を使って作業できるようにする必要がある場合には最適な選択肢です。

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