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ファスナの種類:完全ガイド

ファスナの種類:完全ガイド

製品を設計する際、ファスナの検討は十分にされていますか? ファスナは製品の設計を左右する大きな要素部品ですが、非常に多くの種類やスタイルがあるため、用途に最適なものを選ぶには、見極めるべきポイントを知っておくことが大変役立ちます。最適なファスナを選ぶには、材料から使用環境までさまざまな要素を検討することが重要です

このガイドでは、ファスナの基本情報と、より良いファスナを選ぶためのポイントを解説します。

ファスナとは?

ファスナは、2つ以上の部材を機械的に接合する金物で、永久的な接合もしくは、部材の取り外しが必要な用途に用います。ファスナアセンブリもしくはシステムは、複数の金物部品で構成され、ボルト、ねじやスタッドをナット、リテーナーや他の部品と組み合わせる構成が一般的です。

ファスナ はさまざまな形で最終製品の性能向上を可能にします。例えば、機器のエンクロージャのカバーパネルやドア用途では、パネルの取り外しやドアの開閉を容易にするファスナを用いることで、機器整備やメンテナンス時のアクセス性を向上します。

ファスナの種類

ボルト、ねじ、ナット、グロメットやスタッドなど、ファスナの種類は非常に多く、製品設計においては多くの選択肢があります。ここでは、サウスコが展開する代表的な種類のファスナを紹介します。

  • ねじ

    ねじ は、ねじ山を持つ雄ねじのファスナで、タップ加工済の雌ねじ穴と接合します。標準ねじには、取り外した際に紛失しやすいという弱点がありますが、サウスコのねじファスナアセンブリは脱落防止ねじを採用しています。脱落防止ねじは常時パネルに固定されるため、部品の紛失を防ぎ、部品の落下から繊細な電子機器を保護できる利点があります。ばね式のエジェクト機構や、位置合わせを自己整合するフローティング機構を持つため簡単に取り付けられ、ねじ山の嵌合でしっかりと固定します。
  • DZUS®(ズース)クオーターターンファスナ

    DZUS®(ズース)クオーターターンファスナ は、手早く、しっかりと固定できるファスナアセンブリで、シンプルな90°回転のみで締結・取り外しできます。クオーターターンとは、1/4回転を意味します。DZUSファスナは強度に優れ、一貫した締付力で振動環境でも締結をしっかりと維持します。また、DZUSファスナはパネルに常時固定されるため使い勝手が良く、部品の紛失を防ぎます。
  • クイックアクセスファスナ

    クイックアクセスファスナ は、迅速に取付・取り外しできるファスナです。パネルに常時固定されるため、ファスナの部品を紛失しない設計が施されています。振動環境でもしっかりと締結を維持し、一貫した締付力を発揮します。クイックアクセスファスナは、取付コストを低く抑えることができ、より迅速な作業を可能にするほか、耐振動性に優れ、より直感的な操作を可能にします。
  • リベット

    リベット は、主に円柱状の胴部(テール)の一方に頭部(ヘッド)を持つ、永久的に接合するタイプのファスナです。外観表面をすっきりと保つことができます。サウスコのリベットは耐タンパ性を備え、打ち抜きや引き抜きなどによる不正な取り外しを防ぐ設計を採用しています。ドライブリベットは特殊工具を使わずに簡単に取り付けられます。また、リベットの材質には長期使用に耐えるアルミニウムやステンレス鋼などの耐腐食材料が用いられています。
  • LOCKWELL(ロックウェル)クイックリリースピン

    LOCKWELL(ロックウェル)クイックリリースピン LOCKWELL(ロックウェル)クイックリリースピン は、頻繁に着脱を繰り返す用途で、素早く簡単に固定するロッックピンタイプのファスナです。クイックリリースピンの着脱はプッシュボタンを押すだけで、片手で簡単に取り扱うことができます。取付時には、ボタンを離すとシャフトに内蔵したばねがピン先端のボールロックを突出し、ぴったりと嵌合します。

用途に適したファスナを選ぶには?

ファスナを選ぶ際、用途に最適なものを選ぶにはコツがあります。基本として、まず用途に合ったサイズと強度要件を満たすものを選びます。サイズは、使用中にファスナが落下しないためにも、大き過ぎず小さ過ぎないものを選びます。次に、ファスナの取付方法を検討します。主な方法には、セルフクリンチングナット、クリップオンやスナップインなどのリセプタクルを用いるものや、リテーナーを用いてパネル側に取り付けるスタッド、ボルトやねじがあります。

これらの基本に加え、用途に適したファスナを選ぶ際は、以下のポイントを考慮します。

材質

用途に最適な材質を選ぶ – 主なファスナの材質には、鋼、ステンレス鋼と熱可塑性プラスチックがありますが、それぞれ価格、性能と特性が異なります。まずは用途の静荷重要件を満たすものを選ぶことが重要です。用途の通常使用での負荷に耐えられない材質は、ファスナの不具合や損傷につながります。

鋼とステンレス鋼は中〜高負荷の用途に適しているのに対し、熱可塑性プラスチックは同等の負荷に適しません。材質の選定は、最終用途の目的により異なります、例えば、自動車のアクセスパネルには、走行中の負荷や振動に耐え、しっかりと車体フレームに固定される性能が求められるため、高強度の材質を用いた全金属製のファスナシステムが用いられます。

ライフサイクル

用途におけるファスナの耐久寿命 – サイクル寿命を決定する主な要素は、想定される着脱(または開閉)回数と、ファスナの設計および材質で、用途によってはこれらに使用環境が加わります。極度な高温または低温環境や塩害による腐食は、サイクル寿命に悪影響を及ぼす場合があります。

例えば、自動車のアクセスパネルは整備の際に定期的に取り外す必要があるため、ファスナにはパネルの繰り返し着脱に適した耐久性が求められます。車は使用年数にわたり定期点検を続ける必要があるため、ファスナの設計寿命は、車の想定使用年数と同じ、もしくはそれ以上であることが重要です。サウスコでは、一般的もしくは長期サイクル寿命設計のファスナを提供しています。

用途環境

ファスナを選ぶ上で重要な要素の一つは、最終製品の用途環境です。設計の際には、用途環境でファスナにかかる振動や衝撃を考慮し、他の可動箇所、パネルを落下させる行為や、その他操作の振動や衝撃によって、ファスナが不意に外れる事態を防ぐ必要があります。例えば、車のアクセスパネルに使われるファスナは、稼働中は常に振動にさらされています。

設計の際には、用途環境の温度、薬品や化学的要素、日射など、ファスナに影響を及ぼす要因を把握することが大切です。日光や風にさらされる屋外環境では、屋内環境に比べてファスナの劣化が早まります。オイルや洗浄剤に含まれる薬品や化学物質もまた、ファスナの品質低下を招く場合があります。車のアクセスパネルの材質には、屋外環境から保護するため、主にプラスチックが用いられています。ファスナについても同様の環境に耐え、かつ耐腐食性である必要があります。

セキュリティ要件

セキュリティ性が求められる用途には、要件に適したファスナを選びます。手動で着脱できるファスナは、高いセキュリティ性を要さない箇所に使用します。手動ファスナは、簡単に使用できることを重視した設計で、ツマミ(ウイング形、ベイル形)やノブなどのスタイルがあります。

他方、セキュリティ性が求められる用途には、着脱に治具や工具を用いるファスナが適しています。指定の治具を持つ作業者にのみエンクロージャへのアクセスを制限でき、さらに独自の治具を用いることでセキュリティ性を高めることができます。用途の中には、法規制によってこのようなファスナの使用が定められている場合もあります。頭部形状は、プラスまたはマイナスリセス(溝)をはじめ、多くの種類があります。

加えて、防犯性が求められるエンクロージャなどの用途では、不正アクセスを防ぐ措置が求められます。このような場合は防犯設計のファスナを用いることができます。例えば、ベルコア・エレクトロニクス型のリセス(溝)は、六角ソケットの中央にピンを有す構造で、このような頭部形状を持つファスナは不正アクセスの低減に貢献します。

さいごに、ファスナの選定にあたっては、標準品に加えてカスタム品という選択肢もあります。サウスコの経験豊富な技術チームは、ご希望の用途要件を満たすファスナシステムの設計開発をお手伝いいたします。 用途に適したファスナの種類や選定のご相談など、サウスコまでお気軽にご相談ください。

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