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産業機器製品を成功に導く 設計のポイントとは

産業機器製品を成功に導く 設計のポイントとは

グローバル化、新技術の登場やユーザーニーズの進化に伴い、製造業各社が世界市場で勝ち残るには、これまで以上に高い品質の製品開発が求められています[1] 。これらの新製品はまた、独自性を持ち、最新技術を採用し、同時に競争力のある価格設定である必要があります。複雑で変化の激しい市場環境に置かれる機器メーカーは、前述のニーズを満たし、かつ差別化と市場での優位性を確保し、そしてビジネスを成長させるという課題に直面しています。

業種、用途や製品にかかわらず、技術的な課題をクリアし、競争性の高い製品を開発するには、共通した5つのポイントがあります

1.  設計の差別化

設計による差別化は、もはやハイエンド用途だけのものではありません。空調機器であれ、高級家具であれ、エンドユーザーは製品デザインでその製品の品質と価値を判断します。

製品の特徴が重視される市場環境では、より直感性に優れ、最新技術を採り入れた機器設計が製品競争力の点で大きなメリットを生み出します。例えば、外観や人間工学的な使いやすさは、産業機械の設計においては最優先事項ではありませんが、多くの用途においてこれらは金物などの機構部品の選定に大きく影響します。設計の段階で、外観や使いやすさなどについても課題を特定し、その解決策を探っていくことが、製品の差別化や競争力の向上につながります。産業機器は、通常は過酷環境で使用されることが多いですが、見た目や操作感は製品全体の品質に対する印象を左右するという点で非常に重要です。

設計においては、ロック、ラッチ、取付金具やヒンジなどの金物も差別化する要素になります。これらの金物部品は、ユーザーが機器を取り扱う上で実際に触れる「タッチポイント」です。例えば、機器にモニターを設置する際、コンスタント(定)トルクヒンジを組み込んだ取付金具やアームを用いることで、直感的にモニターの位置決めが可能になり、使いやすさを大幅に向上することから、エンドユーザーに対するメリットを提供することができます。このような体験はエンドユーザーに付加価値を与えるもので、これらの位置制御ヒンジやモニター取付金具は、工場設備、医療機器や照明器具などの大手メーカー各社で採用されています。

2安全・セキュリティリスクへの対策

安全規制の遵守がこれまで以上に厳格化する中、上市までの開発期間は、加速する顧客ニーズの変化や技術の進歩のスピードとともに、今後さらに短くなることが見込まれており[2]、製造現場では、生産性の向上と、安全衛生管理のバランスをとっていくことが課題となっています。産業機器製品の安全性とセキュリティ性を担保すると同時に、変化する市場の状況に迅速に応える体制を整えることは、今後さらに重要になります。製造プロセスにおける金物部品や複雑なパーツアセンブリの紛失などの日々の問題の重なりはダウンタイム発生の原因となり、対策の有無は、企業としての対応力や市場での競争力を左右する要因になり得ます。

適切な金物部品を選ぶことは、業界基準や法令遵守の遂行を容易にし、潜在的なリスクを緩和する上で有効な方法です。適切な金物部品は、業界基準に適合しているだけでなく、産業機器製品の安全性や性能を高めることにもつながります。機械設計において最低限適合していることが好ましい基準には、欧州機械指令(2006/42/EC)があり、これには、機器・装置の保護カバーやパネルに用いられるねじ・ファスナは、紛失や巻き込みを防ぐため、カバーまたは機器から脱落しないことが規定されています。

このような用途においては、必要に応じて設計に脱落防止ねじやクオーターターンファスナを組み込むことで、機器取扱者の安全性の向上や、機器稼働停止要因の低減に寄与します。

 

3.  効率性と均一性の向上

フォーブス誌「グローバル製造業の展望2016」では、製造業が取り組むべき第一の課題は事業コストの削減であると結論づけています[3] 。これは、市場のグローバル化と消費者の価格重視傾向を反映したもので、製造業は数ある産業の中で世界的に最も厳しいコスト競争に直面しています。結果として、メーカー各社では、常に新しい技術、製品やプロセスを導入することで、効率性を高める新しい方法を模索しています[4]。

産業機器メーカーでは、リードタイムの短縮化と、組立工程の効率化を実現する方法として、部品点数の少ない金物の導入に着目しています。例えば、ドアパネルに用いる圧縮ラッチを選ぶ際には、グリップ(ドア閉鎖状態でドアパネル表面からドア枠内側までの距離)が固定され、また圧縮の程度が顧客用途に合わせて調整済の状態で納品されるものを選ぶことで、リードタイムを短縮し、組立工程のコストを低減することができます。製品の性能や品質を損なうことなく組立工程の効率化を実現することは、機器メーカーにとって大きなメリットです。

効率性と品質の均一性を向上する部品を選ぶことは、競争力を保つことにもつながります。部品選びに際してはまた、金物の耐用サイクルや品質の均一性について広範な試験や工程の検証体制を持つ部品サプライヤーを選ぶこともポイントです。

 

4.   性能の強化

最終製品全体の性能を強化するには、耐久性に優れた高性能の部品を選ぶことがポイントです。異なる天候、温度や気圧条件でも一定の性能を安定して発揮する金物部品を選ぶことで、最終製品の長寿命化につながります。金物サプライヤーを選ぶ際には、産業向け市場での実績や経験を持ち、目的用途の性能を最適化する材料や仕上げについて適切な提案ができるサプライヤーを選ぶことで大きなメリットを得ることができます。例えば、屋外使用用途向けにステンレス鋼製のパッチン錠を選ぶ場合は、まず性能の点でカバーやパネルをしっかりと密閉する安定した締付力を有していることはもちろんのこと、防水防塵(IP)規格に適合していることで、適切な耐久性を確保することができます。

また、最終製品を成功に導くポイントには、品質性能試験による徹底した品質の確保があります。部品サプライヤーについても同様です。産業用途で実績を持つサプライヤーは、厳しい用途環境にも対応する高いレベルの品質を確保するための製造、試験、組立体制を整えています。このようなサプライヤーと協働し、各々の用途に最適な金物部品を選んでいくことは、最終製品の差別化につながります。

 

5.  柔軟性の強化

製造体制は、今後10年の間にカスタム化がさらに進み [5]、これに伴い機器メーカーには、エンドユーザー個々の仕様に合わせてカスタマイズ可能な製品を供給していくことが求められるとされています。複雑な設計要件を満たし、かつ競争力、柔軟性とユーザーの使いやすさを併せ持つ機器の設計には、広い視野が必要です。

まず、機器メーカーは、サービス対応に重点を置き、顧客の求める価値向上ニーズの増加に応える体制を強化する必要があります。同様に、部品サプライヤーは、品質の良い製品を供給するだけでなく、機器メーカーのパートナー関係によって、革新的な機器の設計をサポートする技術サービスを提供できることが必要です。

屋内暖房機器の主パネルドアを安全に開閉管理する事例では、部品サプライヤーの技術チームが機器メーカーと連携することで、用途に最適なソリューションとして、コンシールド(外側から見えない)回転ラッチシステムの提案に至りました。このラッチシステムは、外観の意匠性を高めるだけでなく、外部からの不正なこじ開けを招く隙間を無くし、またプッシュ-クローズ機構による取り扱いやすさでユーザーの利便性を実現するものです。機器メーカーは、これらのコンシールドラッチ、アクチュエータを含むシステムを採用することで、機器製品の外観とセキュリティ性を向上することができ、また、将来に向けた協働設計の体制を整えることができました。

 

変化への対応力

機器メーカーが今後も新たな課題や機会に対応していくにあたっては、これまでに述べた5つのポイントに配慮することで、変化し続ける市場で競争力のある設計、製造工程の効率化と、セキュリティ性や機器性能の向上を実現し、優位性を保つことができます。

機器メーカーが目標を達成し、優位性を保つにはまた、設計、安全性、効率性、機器性能や柔軟性の課題解決に寄与する、実績を持つ金物部品ソリューションの導入もポイントになります。これらは、産業機器製品の短期的、そして長期的な成功につながります。

[1] The Future of Manufacturing in Europe 2015-2020, The Challenge for Sustainability - Institute for Prospective Technological Studies, Agility Forum

[2] The Future of Manufacturing in Europe 2015-2020, The Challenge for Sustainability - Institute for Prospective Technological Studies, Agility Forum

[3] Global Manufacturing Outlook, Forbes, 2016

[4] Manufacturing Our Future, Cases on the Future of Manufacturing, World Economic Forum

[5] The Future of Manufacturing in Europe 2015-2020 The Challenge for Sustainability  

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