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キオスク機器の設計のセキュリティを強化する電子錠システム

キオスク機器の設計のセキュリティを強化する電子錠システム

新たなテクノロジーの時代を迎えたことで、消費者は様々なモノや情報を指先の操作だけで入手できるようになりました。コミュニケーションやアクセスの方法を大きく変えたモバイルアプリケーションやスマートフォン技術は、様々な産業での目的や用途で利便性やアクセス性をさらに向上し、活用範囲を拡大しています。なかでもセルフサービス産業では、活発な技術導入が進んでいます。

消費者が24時間いつでも買い物をする今日、小売・サービス産業では消費者がほぼあらゆる場所からアクセスし、即座に商品を購入可能なセルフサービス型のエンクロ-ジャに対する投資が行われています。多くの人々が行き交う場所に設置されるセルフチェックアウト型のキオスク、券売機、電子式無人ロッカーといったセルフサービス型エンクロージャの増加に伴い、損失や損害の防止は事業者にとって大きな課題となっています。

従来のセルフサービス用途では、機器設計においてロック&キー機構に通常期待される機能は、アクセス制御とセキュリティでしたが、高額商品を取り扱う自動販売キオスクや、「スマート自動販売」システムが登場したことで、遠隔からの制御と監視が可能な、さらに高度な物理的セキュリティソリューションがセルフサービス機器に求められるようになりました。

セルフサービス型エンクロージャの設計にあたっては、エンクロージャのアクセスを制御するハードウェア(金物)について十分な検討が必要です。インテリジェントな電子ロック、ラッチをエンクロージャに統合することで、セルフサービス機器の制御性やセキュリティ性を向上し、設備投資のロス低減に寄与します。

 

インテリジェント自動販売機の登場

セルフサービス産業は、黎明期の食品自動販売機やATM機器の時代から大きく進歩しています。様々な公共の場への設置が拡大し、購入経路として消費者に受け入れられている今日のセルフサービス向けエンクロージャは、DVDから高級品まであらゆる商品の販売に対応するように設計されています。

調査によると、多くの消費者は小売店で販売員やレジ係員と関わるよりも、「仮想」顧客体験の方を好むと言う結果が出ています。2013年にシスコ(Cisco)が実施した消費行動に関する調査では、調査に参加した消費者のうち、チェックアウトについては52%が列に並んでレジの順番を待つよりもセルフチェックアウトステーションの方を好むと回答し、また61%は完全に自動化された店舗での買い物を望むと回答しました1。

 

電子錠におけるこれからのトレンド

エンクロージャやキオスク産業では、従来のATM、小売用自動販売機やセルフチェックアウトシステム、セルフサービスなどの用途を超えた、次のレベルの活用に向けた発展と開発が進んでいます。フロスト&サリバンが実施した調査によると、スマート自動販売機の稼働台数は2012年の50~70万台から、2018年までには200万台規模になると予想されています。

医療用品販売 – 米国での医療改革に伴い2010年に施行された医療保険制度改革法(PPACA)では、保険会社や外来患者向けサービスにおける医療サービスの自動化推進を掲げています。現在医療機関では、受付および支払用途にキオスク機器が利用されていますが、医療保険商品の競争性向上に向けた、処方箋や医薬品の販売分野におけるキオスク機器利用の拡大も新たな用途の一つです。電子ロックは、高価な医薬品や患者個人情報を確実に保護・管理するニーズを満たすセキュリティ性と信頼性を提供します。

小荷物ロッカー – 荷物の受取および預入機能を備えた小荷物ロッカー(PUDO)は、電子ロックのセキュリティ性を大きく活用できる分野です。これらのセルフサービス向けエンクロージャは、主に宅配サービスや小売によって設営されるもので、顧客ユーザーは管理された指定ロッカーから荷物を受け取ることができます。電子ロックは、各ロッカーのドアパネル内側に取付けることができ、顧客ユーザーはPUDOインターフェイスに独自のアクセスコードを入力することでロッカーを解錠します。

レンタサイクル – 米国ではレンタサイクル向けキオスクが広く普及しており、特に交通渋滞が多い大都市では代替の交通手段として自転車の需要が増えています。電子ロックは、使用されていない自転車を安全にロックし、料金支払システムやユーザーインターフェイスによる作動で、複雑な手間なくロックを解錠します。また、レンタサイクルなどの用途で使用する電子ロックには、過酷用途向けの材質を使用した耐食性に優れた筐体と、水やホコリに対して電気系統を保護する防水・防塵性が必要です。

自動小売サービスの需要が増加するなか、成長するセルフサービス産業のニーズに応えるため技術も進化を続けています。機器メーカーではキオスクやエンクロージャにワイヤレス技術を導入することで、遠隔から在庫状況を追跡し、現場に出向くことなく販売記録を管理可能なシステムを開発しています。これらのインテリジェント販売システムの多くは、既存のITシステムに統合可能な遠隔機械モニタリング(RMM)機能を備えているため、キオスク機器を管理する事業者は、複数の機器を一つのネットワーク上でモニタリングすることができます。

電子ロックとラッチは、このようなシステムネットワークに連携可能で、RMMを使ったサービス情報の追跡と同様に、定期メンテナンスアクセスの追跡や、機器への不正アクセスの通知などの機能を付加します。インテリジェンスを活用したシステムの導入によって、セルフサービスシステムの効率的な管理と遠隔操作が可能になります。

 

電子アクセスの仕組み

電子ロックおよびラッチは、既存のRMMシステムと統合することでエンクロージャにインテリジェントなセキュリティ機能を付加します。電子ロックを電子アクセスシステムの一部として使用した場合、ユーザー認証、履歴監査記録機能を備えた電子署名の作成や、セキュリティ管理を簡素化するほか、窃盗や不正行為の防止に寄与します。

電子アクセスシステムは、3つの重要な要素を1つのシステムとして統合したもので、セルフサービス用途でインテリジェントなセキュリティを提供します。含まれる要素とは、電子機械ロック/ラッチ、アクセス制御/ユーザーインターフェイス、そして遠隔モニタリング機能です。

電子機械ロックは電子アクセスソリューションの主な構成部品で、物理的セキュリティ、取付方法、システムの電気要件や、システム全体のデザインを左右する要素です。例えば、サウスコのR4-EM電子ロータリーラッチは、センサーと複数信号の出力機能を備え、ローカルおよび遠隔監視の両方にデータ提供が可能なため、窃盗などの標的になりやすいATMや、タブレットやスマートフォン等の高額商品を扱う自動販売機に適しています。ロック機構の部品は機器の内側に取り付け可能であるため、美観性に優れる上、不正なこじ開けを招くプライポイント(接合部の切欠き)を無くすことで破壊行為を防止します。

 

既存のネットワークセキュリティに簡単に統合し、遠隔監視を可能にする電子ロック、コンシールド(パネル内蔵式)のラッチで高いセキュリティ性を提供

 

R4-EMなどの電子アクセスソリューションは、エンクロージャに備わるすべてのドアとパネルを電子的に保護し、これらのアクセス監査証跡を行うため、セルフサービス向けエンクロージャに適しています。電子アクセスソリューションは、ドアやエンクロージャのパネルが開閉するごとに信号を監視システムに伝送し、アクセスの確認と記録を実施します。電子アクセスシステムが報告通知する情報は、システムの設定によって、単純な施錠や解錠の情報から、操作したユーザーの認証、操作時間、解錠している時間など多岐にわたります。

電子ロックは、ユーザー認証を通じてネットワーク上のアクセスを制御します。消費者などの顧客ユーザーが使用する場合、電子ロックはソフトウェアインターフェースを通してデータ入力を制御し、購入商品の入ったロッカーにのみアクセスを許可します。例えばキオスクの一種である電子機器用充電機の場合、電子ロックはユーザーによる購入リクエストに応答し、特定のロッカーを開錠します。充電完了後には、ユーザーが機器を回収した後ロッカーのドアを閉鎖します。

一方、メンテナンス業者、現金取扱者、在庫管理者は、システムの異なる場所へのアクセスが必要ですが、これらの作業者にはセキュリティ上の理由からエンクロージャ全体へのアクセス権限ではなく、それぞれ必要な部分のみにアクセスを許可する形態が求められています。例えば、1台のエンクロージャの中でも、機器点検パネルの外側に設置した電子ロータリーロックは、メンテナンス作業者の持つ近接カードに応答して解錠し、他方、商品格納部のドアにはBluetooth対応のラッチを設置し、在庫担当者はスマートフォン経由で解錠することができます。

インテリジェント技術を採用したアクセス制御は、従来型のロック&キー装置に比べて、スタッフの入替時でも簡単に再プログラムが可能なことから、キオスク機器やエンクロージャを窃盗などから守ります。電子アクセスシステムでは、システム管理者は個別のアクセスコードを管理および監視し、また新しい物理キーやアクセス装置を従業員に配布することなくコードを変更することができます。

 

機能性と美しい外観を誇るデザイン

電子アクセスソリューションは、セキュリティ性に加え、優れた外観、感触、機能性を付加することで総体的にエンクロージャのデザインを向上することができます。セルフサービス型キオスクやエンクロージャのデザインにおいては、機能性だけではなく消費者にアピールする意匠性も重要なポイントの一つです。設計においては、効率的なセルフサービスを実現するデザイン性と使いやすさのバランスをとることも大切です。

多くの最新型キオスク機器では、機器の周辺360度から商品を見ることができるデザインが採用されているため、以前はキオスクの外側に設置されていた配線や冷却ファンなどの部品がエンクロージャの内側に格納されています。電子ロックはエンクロージャの内側に簡単に取付けられるため、機器外側表面をフラッシュ(平面)に保つことで不正なこじ開けを招くプライポイント(接合部の切欠き)を無くし、美観性も向上します。

BluetoothやRFIDなどの無線スマート技術の進歩に伴い、新型セルフサービス向けエンクロージャの開発においては、配線の最小化と互換性の拡張に重点を置いています。柔軟な設計に対応する電子ロックは、既存の機械式もしくは電気式アクセスソリューションとの統合を簡素化します。電子ロックの統合には、物理的環境(取付用ハードウェアと電子ロックのエンクロージャとの適合性)や、既存の電気配線、制御機構や電源システムと連携する方法を考慮する必要があります。

最も効率的な電子ロックには、配線や消費電力を最小化する設計が採用されています。高い信頼性を備えた電子ロックは、旧来型に比べ省電力で、エンクロージャ全体のエネルギー消費を低減します。また、より高い荷重に対応したギアモーター駆動を特徴とし、ソレノイド駆動に比べて使用期間にわたり一定した動作を提供します。

セルフサービス向けエンクロージャに適した電子アクセスシステムの選定には、アプリケーションのセキュリティ要件を満たし、外観やブランドを損なうことなく高品質なユーザーエクスペリエンスを提供する機能性について検討することが大切です。

 

さいごに

消費者向けサービスや小売販売の自動化に対するニーズが増え続けるなか、セルフサービス機器の設計においては用途に適したセキュリティソリューションを選ぶことが非常に重要です。適切な電子アクセスソリューションを選択することで、セルフサービス機器における安全で確実なアクセス制御を可能にし、また既存のセキュリティシステムネットワークと容易に連携・統合することができます。

 

電子アクセスは、セルフサービス向けエンクロージャ運営管理において、ロックの電子的および物理的状態から、潜在的な不正侵入リスクの検知、商品の機器内での引っ掛かりや、ドアの閉鎖状況などのデータ取得伝送まで、すべての監視や制御を容易に実現するソリューションです。高品質な電子ロックソリューションを統合することは、セキュリティ性を向上するだけでなく、エンクロージャの機能性強化、美観性と消費者の期待に沿う魅力的なユーザーインターフェイスを実現します。

 

▶︎ 製品ページ:サウスコの電子錠・電気錠ソリューション

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