モニタ取付金具の選び方
IoT(モノのインターネット)が普及した現在、ユーザー体験や顧客価値を向上するため、機器へのモニタやスクリーンの採用が増加しています。これに伴い、さまざまな種類のモニタ取付金具やモニタアームは、人間工学的な使いやすさやユーザーの利便性を高めるため、セルフサービス機器、キオスク端末、医療機器から製造機器や放送機械など、幅広い機器で用いられるようになりました。設計者の方々の中には、モニタ周りの設計経験が無いまま、製品向上を目的とする革新的なモニタ取付方法の開発を任せられる方もおられます。
用途の設計にモニタを組み込む上で大切なポイントの一つは、モニタの設置方法と設置場所の決定です。これは、設計プロセスにおいても、製品の使いやすさ、全体の品質やユーザーがモニタ操作から得る製品体験に大きく影響する重要なステップです。モニタ取付金具を選ぶ際には、さまざまなユーザーのニーズを丁寧に考慮する必要があります。
モニタ取付金具にはさまざまなタイプがあるため、用途に適したモニタ取付システム設計の絞り込みに苦慮されることがあるかもしれません。モニタ取付金具のメカニズム、考慮すべき点や重要事項についての理解を深めることが、エンドユーザーの用途に適したモニタ取付金具の設計に役立ちます。本稿では、モニタ取付金具の基本を解説していきます。
モニタ取付金具とは?
モニタ取付金具は、多くの方が何らかの形で使用した経験を持つ身近な部品です。モニタ取付金具は2000年代の初め、モニタの価格下落により機器への導入が増え始めた頃から多く流通するようになりました。同時に、モニタ周りの設計においては、容易に設置でき、かつユーザーがモニタの位置を自由に調整できる機能性が求められました。これに応えたのがモニタ取付金具です。
最もシンプルな形のモニタ取付金具は、モニタ、タッチスクリーンや他のディスプレイを設置面上に取り付けるもので、設置面は病室の床頭台から建設機械キャブ内のダッシュボードまで多岐にわたります。優れたモニタ取付金具は、ユーザーが好みの位置にモニタを簡単に動かせる機能性を持ちます。エンドユーザーがモニタの角度を直感的に楽に調整でき、調整後はその位置をしっかりと保持できるものを選ぶことが大切です。
モニタ取付金具のメカニズム?
モニタ取付金具は、回転する各関節のトルク制御によって機能し、トルクはユーザーに適したモニタ位置調整時の操作力を決定します。トルクはまた、重力などによる不要な力に対して調整後の位置を保持する機能も司ります。これらの機能によりユーザーはモニタを楽に動かし、日光や頭上照明の反射によるモニタ画面のギラつきの回避やモニタ位置の最適化で使い勝手を向上できます。
モニタ取付金具における、3つの一般的なトルクの適用法:
- 各可動関節にトルクを付加
ユーザーがそれぞれの可動する関節をねじやクランプで締め付けてトルクを制御する最もシンプルな方法。モニタ位置を変える度に関節の締め付け作業が必要なため、モニタの移動を頻繁に行わない用途や、抵抗を得るためにモニタ取付金具の関節の調整が必要な用途に適しています。
- トルク調整済機構付き
回転する関節のトルクが調整済のため、ユーザーによる調整や締め付け作業の必要がありません。所定の位置にモニタを楽に移動でき、調整後の位置をしっかりと保持します。
- 圧力装置によるトルク付加
スプリングステーやガスステーなどの圧力装置を用いることで、操作時の力を軽減しモニタを楽に移動できます。主に大型・高重量のモニタに適しています。
注:トルク調整済でないタイプのモニタ取付金具の位置を調整し固定するには、可動関節のクランプを締め付ける作業が必要になるため、このタイプのモニタ取付金具を導入する際には用途目的とユーザーの利便性を考慮されることをお勧めします。
モニタ取付金具を選ぶ際に考慮すべきポイント?
用途設計にモニタ取付金具を組み込む際には、以下の点を考慮します。
力と荷重
モニタ取付金具の操作において想定されるすべての力や荷重に耐える性能を確保できていますか? モニタ取付金具を選ぶには、モニタの重量と寸法に適切なもの、そして用途環境の振動による負荷の影響を考慮します。例えば、高レベルの振動にさらされる航空機用途では、最も頑丈なモニタ取付金具でもブレを起こす場合があります。
高い安全性を要する用途のなかには、安全率6.0が求められるものも少なくありません。モニタ取付金具を安全に取り付けるには、設置面についても十分に考慮する必要があります。設置面には、モニタ取付金具を介して設置面にかかるすべての負荷に耐える強度を確保することが重要です。強度が不十分な場合、例えば石膏ボードなどの建材の設置面を損壊する可能性があります。
用途の使用環境
モニタ取付金具選びを最終的に決定するのは用途の使用環境です。ユーザーがモニタを使う際、頻繁に動かす(ダイナミック)か、もしくは主に固定のみであるかを見極めます。使い方は用途によって様々で、例えば産業機械用途と歯科医院では全く異なるため、それぞれの使用環境に適したものを選びます。1日にモニタ位置を数回以上移動する用途では、モニタを動かしやすく、外観性と使い勝手に優れた機能のモデルが適しています。モニタ位置の固定のみで移動が必要ない用途には、よりシンプルなモデルが適しています。
例えば、GPSシステムを用いる農機のモニタの場合は、運転作業中に日光の反射によるモニタのギラつきを避けるため、モニタをすばやく自由に動かせる機能性が求められます。他方、オフィスのロビーなど、所定の位置に固定されているモニタには農機と同等の可動性は必要ありません。このように、モニタ取付金具の選定は、用途の使用環境によって大きく異なります。
モニタ取付金具と製品寿命
モニタ取付金具の選定においては、製品寿命についても考慮します。モニタ取付金具の寿命は位置決め機能や使用環境によって異なりますが、医療機器や産業機械など、多くのヘビーユース用途向けのものはモニタ自体の耐用年数を超える20年以上の寿命があります。
VESA規格とは?
VESA規格は、ビデオ関連の標準化団体であるVESA(Video Electronics Standards Association)が策定した壁掛け型のモニタ設置システムの世界的な規格で、テレビモニタをはじめ多くの用途で採用されています。モニタの重量や寸法によって取付穴間の距離や数が標準化されているため、使用するモニタに適したモニタ取付金具を選ぶことができます。
VESA規格を使いこなす
モニタ周りの設計においては、VESA規格を元に進めることで設計プロセスの工程を短縮し、シンプルかつ迅速に行うことができます。用途によってVESA規格を適用しない場合は、モニタ取付金具をカスタム設計します。
一般的にはVESA規格のモニタ取付金具を使用できる製品設計が好ましく、VESA規格のモニタ取付金具を用いることでエンドユーザーが被るリスクを軽減し、使いやすく安定した製品づくりが可能になります。VESA規格のモニタ取付金具はエンドユーザーが取り付けやすい構造であることも一つのメリットです。モニタ取付金具の中にはモニタ取付用ねじに鍵穴状の設計を施し、エンドユーザー自身で簡単に取り付けられるタイプのものもあります。
用途に適したモニタ取付金具を選ぶには、起こりうる多くの事態や環境を考慮することが大切です。モニタ取付金具の設計やポイントや用途についてのご相談は、サウスコまでお気軽にお問い合わせください。